園部逸夫元最高裁判事が平成7年の最高裁判決時、地方参政権を付与できるのは歴史的経緯のある在日韓国・朝鮮人ら特別永住者のみを想定したと明らかにしたことは、在日中国人ら一般永住者も含めた参政権付与を目指す民主党、公明党などの外国人参政権推進派にとって、大きな打撃といえる。推進派の多くは、園部氏が主導的役割を果たしたとされるこの判決を主張の根拠としてきたからだ。
園部氏は特別永住者であっても、転居などで地域との密接な関係を失った場合は、選挙権は認められないとの考えも示した。これも、推進派の「納税しているのだから選挙権も与えるべきだ」との論法に厳しくクギを刺した形だ。
現在、韓国・朝鮮籍の特別永住者は帰化の増加で年間数千人減り続けている。一方で、中国籍の一般永住者は平成18年からの3年間で約2万5100人増の約14万人に達している。
一般永住者まで付与の対象とした場合、小さな自治体に特定国の外国人が集団移住し、キャスチングボートを握る可能性も指摘されている。この懸念について園部氏は「もっともだ。そこまでして、門戸を開く必要はない」と明言した。
ただ、園部氏は永住外国人への参政権付与は合憲との立場は崩していない。判決時の「政治的配慮」を認め、「無理やり連れてこられて、参政権がほしいのなら帰化すればいいというのは、先祖を大切にする韓国人にとっては簡単なことではない」とも述べた。
背景には贖罪(しょくざい)意識があるようだが、この事実認識は疑問だ。日大の百地章教授らによれば、戦時動員されて日本に来た朝鮮人はほとんどが帰国した。現在も在留する韓国・朝鮮人の多くは戦前から日本に生活基盤があり、自らの意思で残ったと見るのが妥当で、参政権論議の見直しは必至だ。(小島優)
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■外国人地方参政権に関する最高裁判決 永住外国人に地方参政権を認めない公選法などの規定は、住民自治を定めた憲法に違反すると、在日韓国人9人が起こした訴訟の上告審で最高裁第3小法廷は平成7年2月、「憲法上、わが国に在留する外国人に対し、選挙の権利を保障したものではない」とした一審判決を支持し、原告の請求を棄却した。ただ、判決理由の判例拘束力のない「傍論」部分で「永住外国人に対し、地方レベルの参政権を法律をもって認めることは憲法上禁止されていない」との判断も示し、地方参政権付与推進派を勢いづかせた。
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